天然要害の支城【鉢形城・埼玉県】

埼玉県寄居町にある鉢形城（はちがたじょう）は、荒川に面する断崖上に築かれた要害山城で、平地部から断崖部に向かって本曲輪、二の曲輪、三の曲輪の各郭（曲輪）が連なる連郭式の山城です。一番高いところに本丸（本曲輪）があるのが普通ですが、鉢形城は面白いことにその逆で、一番高いところに三の曲輪があります。当初は本曲輪しかなかった城郭に、整備拡張によってより高い断崖に新しい曲輪を作っていったためと思われます。

築城者は1476年（文明8年）、関東管領の山内上杉氏の家臣・長尾景春（かげはる）と伝えられていますが、後に北条氏康の四男・氏邦（うじくに）により小田原城の支城として現在の形に整備拡充されました。

北条氏の北関東支配の拠点において甲斐・信濃からの侵攻へ防御として重要な役割を持っていた鉢形城ですが、1590年（天正18年）、豊臣秀吉による小田原攻めが始まると、前田利家・上杉景勝らの豊臣連合軍35,000に対しわずか3000の手勢で１ヶ月の籠城も、圧倒的な連合軍の前に北条氏邦は降伏、開城します。

鉢形城と同様に、小田原城の支城であった山中城（静岡県三島市）、八王子城（東京）なども次々と陥落し、遂に小田原城も３ヶ月以上におよぶ籠城戦の末に開城、ここに北条氏が滅亡します。

唯一、最後まで守り抜いた忍城（埼玉県行田市）も小田原城陥落の知らせを受け開城します。

開城後の鉢形城は、北条氏滅亡後の徳川家康の関東封入により廃城となります。